久しぶりの業務外出。
客先対応も終え、少し早めの終業。今日は直帰だ。
日没まで多少時間もあるし、ストリートスナップを少し狙いたいところ。
目的の場所まで、一度地下鉄を乗り換える。
都心の地下鉄は、まるで迷路だ。
中には同じ駅名なのに、路線が違うだけで、かなりの距離を歩かされる駅もある。
東京駅界隈の「大手町」なんて、どうして同じ駅名なんだ、っていつも思う。
そんな事を思いながら、駅から駅への連絡通路を進む。
進行方向と逆から出たのか、あるいは一番後ろの車輌だったのかは分からない。
とにかく、もう5分?いや10分歩いた気がする。
似たり寄ったりの作りだし、さっき通った場所じゃないかと疑ってしまう。
「あれ?この看板さっき見たっけ?」というのを繰り返してる。
行けども行けども同じ場所。地下鉄から降りたら異空間だったて映画。
あれさ、子供の時に買って読んだ小説「四次元の世界をさぐる」にあったよな。

子供の頃、夢中になったSFの世界。
この本には、パラレルワールドもバミューダトライアングルもあって
「いつもと違う通学路で帰ったら、暖かい風が吹いて別の所にいた」ってくだりもあった。
通路を折れ曲がった所に、地下に店舗がある。
なになに・・・「地図写真機・地下鉄支店」!
なんで、こんな所にカメラ屋が?
ちょっと疲れちゃったし、寄ってみよう。
店舗に入ると、ショーケースにレンズやカメラが。新旧取り揃えられている。
「いらっしゃいませ。」黒スーツに黒縁メガネの店員。この人どっかで?
「あ、こんな所にカメラ屋があるんですね。」キョロキョロしながら社交辞令。
「まずは受付させて頂いております。何かお探しでしょうか?」
あ、この人、あの時のムスカさん?
うーん、なんだ自由に見れないのか、面倒だな。
考えてもなかったので、取りあえず、これを相談しよう。
「このカメラ、センサーにゴミが付いちゃってるんです。清掃をお願いしたいんですが・・・。」
今日の相棒は、Panasonic DMC-LX100。通称「百式」。
2015年に買って、もう10年以上か。
LX100Ⅱが出たけど、Ⅲがでるという話はない。
コンデジだけど、OM-1やPEN-Fを持ち出さない時は、こいつが便利だし
時折り「おっ」という画を出してくれる。
「ほほう、百式でございますね」ムスカはメガネをチャっと指で持ち上げチラリを見た。
「あ、はい。センサー清掃ってまだ受け付けていますか?」恐る恐る尋ねる。
キラリとメガネが光る。期待できるのか?
「残念ながら、修理も交換部品もすでに終了しているはずです」
最終告知の如く、ムスカが言い放つ。それ、感じ悪いからっ、
「まあ、ズームせず絞らなきゃ気にならないんで、いいです」聞くんじゃなかった。
「お困りの様子ですので、この奥手から通路に出て頂くと、先に担当部門がありますので
そちらにおっしゃってください。では」ムスカは、スゴスゴと奥に消えていった。
あまり酷い事いったら、「バ○ス!」って言ってやろうかと思ったけど、案外親切。
言いつけを守って、反対側から連絡通路へ。しばらく歩くと
唐突に、京都の門構えみたいなのが、ご丁寧に通路の壁に埋まっている。
どう見ても、違和感。これ脳内で、AI画像判定がバシバシでてるよ〜。(@Grokで作成w)

黒い看板に「麗」の文字。どこかで見たような、怖いような・・・。
おそるおそる、ガラガラと扉を開ける。
そこには、赤を基調とした、高級カメラの世界が。

「お帰りなさいませ、ご主人さまぁっ」アニメ声ですけど、そういう店? ていうか君は?
「いや、帰ってきた訳じゃなんですけど」・・・これもデジャヴ感。いや前に会ったよね?
「『センサー清掃のご相談』ですねっ!」
「店長から連絡がありましたっ!」情報共有はされた様だ。同じ系列なのね?
「この百式のセンサーにゴミが付いちゃってですね」
カメラを渡しながら、レンズをズームして、F値を絞る。
「壁の明るい所、撮ってみてください」彼女にカメラを渡す。
「りょっかいしましたー。ズーム、絞って、ポチっ」ば、莫迦にしてるんかっ。
気を取り直して、確認する「ね、そこにゴミが映ってるでしょ?」
「あ、そうですか? うーん」なんだ?見えないの?
ニコッと微笑むと、堂々と彼女が告げた「眼鏡、わっすれました〜」…ミ(ノ_ _)ノ=
眼鏡っ子になって再登場した彼女が再度、画像を確認。
「えーと、良いお奨め商品がございまっす」ちょ、待って。清掃の話は?
「いやいや、カメラを買うつもりで来た訳じゃないんだ」ほら、危ないお店だよ。
「お主人さまは、どんなカメラをお望みですかっ♥」いや、人の話聞いてないでしょ。
「いや、百式の弐型も、もうディスコンだよね。参型はでないでしょ」
正直、次なるマウントも考えてはいるけど、この手の小型カメラも欲しいのだ。
「里子は、同じ位の大きさで、起動も速いし、●み撮りにお奨めでっす」
いや、スナップとイイなさいよ。人聞きが悪いからね。それRICHOだろ?
「GRもⅣが知らない間に出てたみたいだね。在庫なんかあるの?」売る気だな?
「ちょっと確認してきまっす」スキップしながら店に奥へ。相変わらずだな。
「確認して参りましたっ」元気だよね。
「で、ないんでしょ在庫?」
「2月の末に公式の抽選おっわりました〜」ナメテんな、この子。
「ひとつ、提案がありますっ」販売の手を緩めない子だな。なかなかの営業マン。
「なにか推奨機種あるの?」
「え〜、お客様には、ムリかなあ」なんでもモジモジしてますの?
「それ、どゆこと?」押してもダメなら引いてみな営業か?
「この奥にある、「特別なお客様」のコーナ、見たいですか?」な、なにそれ。
赤い棚に並ぶカメラ。遠目に赤いバッチが付いている様にも見える。
「いやいや、あそこには行けないでしょ。財力が必要だし」
「ですよね〜♬」ハッキリ、いうなよ。
「でもぉ、今お持ちのぉ、アレやコレなんかをゴニョゴニョしてえ・・・」小声で囁く彼女。
「つ、つまり、買取をしてやるぞ、そういう事かな?」ちょっと震えてきたよ。
「里子にだせば、財力がなくても、この先に行けまっす」こいつ、凄い営業力だ。
「わ、分かりました。ちょっと待ってください」
そんなこともあろかと、仕事のバッグに押し込んできたアイテムもケースの上に並べる。
まずは、LEICA DG SUMMILUX 9mm、広角なのに小さい麗華銘のレンズ。
PEN-F用にと思ったけど、なかなか出番がないし、M.ZD 7-14mmPROがあるからね。
「あ〜〜〜、DG要らないんですかあぁ」DG9の黒い箱を見つめながらウルウルしてるよ。
「DG15はPEN-Fに付けっぱなしな位、使ってるんだよ。」あわあわして言い訳しちゃったよ。
「9mmはご期待に添えなかったのぉ〜イイレンズなのにぃ」泣きそうな雰囲気だ。困ったな。
「ん?そっちのレンズは・・・??」
ショーケースの上に並べた SIGMA ART 30mm & 60mm f2.8を見て、目を丸くした。
「こ、これは、お呼びしなくっちゃだわ!」ガバっとDG9mmの箱を掴むと行ってしまった。
ゑ?どうすんの? 暫し、店には私だけの状況。店員も来ない。
なんとなく危険を感じる。そろそろあの方が出てくると読者の皆様も期待しているだろう。
「シグマを手放したいというのは、お主か?」背後から声がする。しまった、背後を取られた。
振り返ると、頭には手ぬぐいを海賊巻き。作務衣のような出で立ちに、屈強な体躯。
それは、紛れもなく、奴さ〜。シ・グ・マぁ〜♬ Missing you true ♪
「し、志熊老師」つい、声に出てしまった。ここであったが100年目。
「ん?」なんだ名前を知ってるのかという訝しげな表情。
「いかにも、志熊じゃが、ただの店員じゃ」いったいこの人は、誰なんだろう。
兄弟なのか、以前会った方なのか、はたまた分身か。
「30mmアート、60mmアートの2本か。今となっては懐かしいレンズじゃの」目を細める。
「あの時はお世話になりました。たしか胴着に『瑞光』と書かれたおめしものを・・・」
「・・・気に入らんのか」人の話、聞いてないな、コイツも。
「いや〜SIGMA 56mm F1.4もありますし、60mmARTの機会ないんですよねえ」と説明。
「ところで、先日の星○源と松■豊の「おともだち」は見たじゃろ?」やっぱり聞いてないな。
「ああ、見てました!」なんでか話があっちゃったよ。
「うむ、松■なにがしが沖縄編で使っていたもの、あれは志熊のBFじゃよ」ニカっと笑う。
初回はハッセルだったけど、沖縄編はシルバーのカメラが見えたんだ、かなりマニアだよな。
「そうか、お主も※ンタイの仲間になりに参ったのじゃな?」ん?言いました?
「へ、ヘンタイ?褒め言葉ですか?」聞き返しちゃいました。
「む、ばっ、バッカモーん」コ○ナは茶番だったけど、ツバを飛ばすのはやめてください。
「シグマを売りシグマを買う、つまりアンタイ。必然の流れじゃて・・・」
ヘンタイって言ってましたよ、絶対っ。でも、いや、買わないっす。
「お主、麗華に興味があると見た」鬼の首を取ったかの様に、鋭い視線をこちらに向ける。
「私には、財力が無いと言われました。それでこの梅レンズ群を・・・」
「なにを言っておる、向こうの娘のことじゃ」ゑ? 誰もいないけど。
「助平心は出さぬこと。年寄の言う事は聞いておきなされ」
それ、あんたの事ですよね??
「では、と」スックと立ち上がり、おもむろに30mm&60mmアートの
白い箱を、1つずつ両手で掴み、クロスしたかと思いきや、作務衣の懐にグイ、と仕舞う。
いや、そこに納めなくても・・・。お風呂入ってるかな?
「麗華には近づくなよ。良いな、fpかBFか、決めておけ」
ガッハッハと笑いながら、奥に消える老師。背中には「志 熊」の文字がやはり書いてあった。
また誰もいない店内。
しばらくすると、病院の受付よろしくアナウンスがある。
「店内にお待ちのお客様。この先の黒い床のコーナーにお進みください」
店内奥に、やや黒い床、その先に、赤い床が続いている。
黒い床のエリアまで進めば良いのだろう。
同じようなショーケースの前にイスがある。
いつかみた女性の姿が。「どうぞこちらへ」
やはり何度か会った女性だ・・・。たしか、ノクチを購入した時の・・・
金色に輝くネームプレート。白い字はよく見えないけど、LEICA MATSU・・・?
「管理の者から、こちらにいらっしゃると連絡がありましたので、お待ちしておりました」
ゑ、さっきの凸凹コンビは何だったの? でも、そのお名前は?「麗華?」
あのスケベ爺いはこの事を伝えていたのか?
「ワタクシの使命は、費用対効果。お客様が満足するカメラを提供することです」
「はい、わかります」分かんないけど、あの二人より会話成立。
「店長から、百式の清掃のお話を伺いました」
ゴメンナサイ、またそこからスタートですかい?
「先ほど、問合わせた所、10年以上経過しておりますので「清掃も交換部品も無い」
とのお話しでした。弐型については販売終了です。また、後継機種のお話しも
私の知る限りは存じ上げません。ご期待に添えず申し訳ございません」
「いや、先ほども伺いました。諦めていたので、確認できて助かりました」
やはりコンデジで同じモノを探すのは、時間が経ちすぎたようだ。
GRⅣ(←デジタルⅣと紛らわしいよ)の抽選狙うか、フルサイズを考えるべきなのか。
「分かりました。今日のところは、レンズを処分して帰ります」
諦めよう。こいつが壊れるまで使うまでだ。
「あの。お待ち下さい・・・」彼女に引き留められる。
「私に興味がございますか?」ゑ、ワタクシって言った?小声でわからないよ。
「いや、そりゃそうですよ。君に興味がない人なんているんですか?」おじさん恥ずかしいよ。
「え?」
「え?」ドラマだったら、松任谷由実のブリザードのイントロがかかる、アレ?
「私どもの用意できるモノがございます」耳が遠くなったようだ。疲れてる。
「そのモノとは?」
「ご希望の機能としては、コンデジ、ファインダー、ズーム機能、そして
時折り『ハッ』とする画質を提供される、という事でございますね?!」
そう、そうです。百式の代わりになるモノがあれば。
「参号はございませんが、弐型をリファインし、麗華の赤い御印を付けたものが・・・」
同じ機能で、麗華のバッチ付き? でも特別なお客様の資格が無いとハッキリ言われましたよ。
「それを手に入れるには?」
「はい、こちらのレンズはすべて。そして、そちらの百式も預からせて頂きます」
カメラも持って行かれちゃうのか。
「さすれば?どうなります?」
「はい、このまま出口に進んで頂けます。少しだけ「特別な」お客様用出口です」
考えてみれば、カメラ屋に寄るつもりはなくて、スナップ撮りに行く所だった。
迷ったあげく、この体たらく。大事な事を思いだしました。でもカメラ預けたらムリだよね?
「暫しの我慢で、ご期待に沿うことができますわ」静かな微笑みをみせる。
・・・前回もコレでやられたんじゃなかったか?
「分かりました。何もエビデンスが無いと困るので、お名刺を頂けますか?」
志熊老師が「このスケベぇ」と言っている気がする。
彼女が名刺を渡してくれる。やはり「松下 麗華」あの名前があった。
これだけで満足だ(←詐欺にやられるパターン) 。
イスから立ち上がり、出口の方向を目指す。
「お待ち下さい、お客様」凛とした声が後ろから掛かる。
「はい、なんでしょう?」
「そちらは違いますわ。9(Q)番出口ではございません。向こうの、8番出口です。」
彼女の指示に従い、8番出口へ。
ようやく、地下道から、改札へ。
自宅に帰ったら、こんな箱が届いていました。
これからは電車に乗るときも、気をつけることにします。

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ニノが出演したホラー映画「8番出口」を見たあと、
LX100の後継を探したら、こんな話になりました。
ネタがないので、苦しい展開ですが、御容赦を。
それにしても、LEICA100周年だったんですね。


コメント
久し振りの長編ですね。(笑)
主要キャストも登場し、皆さん相変わらずお元気そうで何よりです。
そして、あの娘のトークに乗せられ、レッドバッヂに手を出してしまいおったか。
「百式の後継が無い……」と時々呟いておったが、この流れに乗せるための伏線ぢゃったか。。。
あの赤いバッヂに魅せられてしまったか。。。
SIGMAのArtは元々お手頃価格なので、あまり支援できなかったかもですが、
それでも、「麗華の捌番」の導入に一役買ったなら、良い散り方だったのかも知れません。
麗華の捌番、どんな画を出してくれるのか、楽しみですね。
おつかれさまでっす!
以前からブツブツ言ってましたが、結局、後継機導入に至りました。
基本的な中身は同じ印象なんで、新しいカメラを買った気があんまりしません(爆)。
LX100にはワンタッチボタンで出来るアートフィルター的なのが数種あったんですが
D-Lux8には、ノーマル、ヴィヴィッド、モノ2つみたいなのしか無い。
要は、現像してやれって事でしょうか?
考え方の違いみたいなのがあるんでしょうけど、その確認はこれからです。
シグマアート2本、DG9mm、オリ45mmf1.7、LX100の他に
オリオンで最後に買ったドットサイトもドナドナしました。
GRを定価で買うより安くなりましたし
消費者物価指数というかカメラの値段が倍になってるのを考えれば
まずまずこの価格なら、となりました。
次のお散歩カメラにたぶん、持って行きます。